0:00

YouTubeに『0:00(レイジ)』を投稿して三ヶ月経った。
雨音と秒針の空間で歌う、ノンコード楽曲。

再生したままでも文章は読めるので、良かったら流し聞きしてください。


深い海にいた。
目の前の、届きそうで届かない声を見つめる。
この世から弾き出されたように、
なにもできずに立ち尽くす夢。

薄れゆくはずが忘れられず、口ずさむようになる。

50音を並べ替えて、私の表現が生まれる。
「流るる雨雫 こっちは降り止まないみたい」

0:00のメロディと歌詞は一年前にできた。
あとは何の音を重ねていこうか。

…雨音と一緒に歌いたい。
楽器の音色よりも儚くて。
百年前の雨も、きっと似たような音。

でも私は、雨音の録音を見くびっていた。
どうしても別の音が入ってしまう。

人の話し声。
バイクや車の排気音。
犬が吠えたり、蛙が鳴いたりする。
翼をはためかせる鳥たち。
時には飛行機のジェット音が鳴り響く。

動物は生きていて、雨に溶け込んでいる。
数えきれないほどの生活が、混じっている。

それゆえに、雨音だけ抽出するには複雑で愛おしい。

自然環境は思い通りになってくれない。
想像との差に苦笑する。

ドラムを奏でるように、水滴が地面を弾く。
不規則なリズムで予想ができない。

百年後の雨は、きっと違う音でしょう。

何種類もの雨音を混ぜていく。
水滴ドラムで不規則なリズムを再現する。

秒針。
ハープ。
残るは、私の歌。

何度も録音を重ねる。
「どうして…」
「どうして!」
「…どうして」

でも、納得いかない。

ノンコードを選んだのは私なのに。
コード進行が無くても、スケールに縛られる。

緊張する、とてつもなく。

かえって音程の正確さを求め始める。
正解を決めると歌は固まる。
鼻歌の気軽さはどこにいったのか。
喉が絞まっていく。
無機質な録音になって、どうする。

結局選んだのは、上手く歌おうと意識しすぎていない音源。

思うがままに歌ってみた。
焦りも混じっていた。
それでも、今の自分の限界を知れた。

ついに投稿した。
いつも見ているYouTubeで自分の動画が流れる。声が聞こえる。

なんともまあ、下手くそだ。

音の理想は、私の中にある。
叶えるための表現がなによりも難しい。

投稿した途端に批判がくると思い込んでいた。
けれど、音源を消さずに毎日過ごしている。
以前の私では想像がつかず、年月を感じる。

ノンコード楽曲を聞いたとき、頭にどんな音が鳴るのか。
それとも他の音は聞こえなくなるのでしょうか。

きっとその人の気分や解釈、時代によって感じ方は変わるのでしょう。

どんな気分のときでも、隣で流してくださると嬉しいです。